続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

中道右派さんへの返信②

「明日は参院選」を書きながら脳裏にあったのは、安倍首相が暗殺された日に書かれた、落合陽一さんによるこのツイートだった。

政府で働く人の悪口をみんなで言うと,その悪口を聞いた誰かが,日本を良くしようと思って銃でその人を撃ったりするんだよ.その人が撃たれた後にみんな暴力はいけない断固として許せないって言うんだよ.言葉の使い方は気をつけようね,みんなの悪意の責任はみんなで取ろうね,メディアも個人も.2:42 PM · Jul 8, 2022·

(落合陽一@ochyaiのTwitterより引用)

落合さんは未フォローだったけど、このツイートがいわゆる「炎上」したせいで、自分のTL(タイムライン。ログ)に表示されてこの意見を見ることになった。

一見して、なんなんだこれは、とても危ない文章だと思った。なんか不気味でもある。

内容もさることながら、意図的に言葉の角を取ってふわっとした表現にしている、その作為を怖く感じた。

ここで言う「政府で働く人」とは、一見公務員のことみたいだけれど、文脈からすると「国家権力を行使する側の政治家」のことを指す。どういう意図があってあえて曖昧にぼやかすのだろう。

また「批判や非難」とは書かず、「悪口」という、曖昧でつかみどころのない言葉を繰り返し用いている。

そして「悪口」が引き金となって、「悪口」を言われている対象がイデオロギッシュな正義感から人を殺しもする。「悪口」を言った人は責任を取ろうねと書いてある。

権力に対する異議申し立てや不満や反論を一括りに「悪口」と表現し、それらを言うもんじゃないという彼の主張、警告を正しいとするのなら、もう日本は中国だし、ロシアだし、香港だし、シンガポールだ。

ていうか、これシンプルに民主主義の全否定じゃないか。

民主主義の国においては、国民に主権があって、国民に選挙で選ばれた政治家が国民の代理人として、政治に関する意思決定の権利を持つ。

政治家は王様ではなく、任期付きで国民に雇われた人々なのだから、国民の意思に反することを勝手に進めることに対して、雇い主である国民が文句を言うのは当然の権利だ。

落合さんの、民主主義の前提に対する無理解や、民主主義の前提を巧妙にずらしていく誘導的な語り口は、すごく怖いと私は思う。

 

だから、私は安倍元首相と与党の所業を列挙して、「これらのことは悪口じゃない。単なる事実でしかない。」とあえて書いた。いつもならここまで言い切らない、挑発的な書き方だったことを認める。

これに対して、

なおさんの書かれている安倍さんの功罪は、事実と、事実ではないことと、安倍さんの責任と言えるか微妙なこと、あとご意見が混ざっていないでしょうか。

という中道右派さんのご意見は、まず「単なる事実」という私の書き方の悪さに反応されたのだろうと思う。確かにこれは「私にとっての事実」に過ぎない。傲慢な書き方だったと思う。全部が安倍さんだけの責任ではないのももちろんです。

でも「安倍政権時代を中心とした与党政治の所業」という点において、私としては事実ではないことを書いたとは思っていない。

 

内容を拝見するに、中道右派さんと私の考える「真実」は、部分的に相当異なるのだろうなと新鮮に読ませていただいた。

第二次安倍政権以降で雇用が改善したことや、労働環境の改善があったことは事実ではないかと思います。金融緩和を推進する黒田総裁を任命し、アメリカとの関係がかつてないほど良好になったことなどは安倍政権以外では実現しなかったであろうと思います。

中道右派さんは、安倍政権で良かったこととして、「雇用の改善」「労働環境の改善」「規制緩和の成功」「アメリカとの関係が過去ないほど良好」といったことを「事実」として書かれているけれども、私はこれらに対していずれも別の意見を持っている。

 

例えば「雇用、労働環境の改善」は政府の少子化対策の失敗で超少子高齢化が進んだせいで、物理的に人手不足になり、売り手市場になるのは当然のことだし、その状況で勤務条件が悪ければ、さっさと辞めてよそに移るのも当たり前なので、企業はそりゃそれぞれに工夫するであろうという考え。

政府が無策とは言わないが、今の政府の優先順位は、常に国民への支援よりも彼らに資金や身の保全や票をもたらす人たちに利益を横流しすることにあると私は思っている。

だから、政府の施策の成果というよりは、結果的にもたらされた状況の中の限定的なプラスの側面を誇っているに過ぎないと考えている。

だいいち、これはいわゆる「就活市場」のようなごく限られた層の話であり、全体としては悪化しているというのが自分の実感。

残業代を支給されず過労死ラインで働いている教師、散々声を上げてたった4000円賃金アップの医療・介護従事者、動けなくなるまで工事現場やコンビニで働く高齢者、出産育児後の女性たち、年齢を重ねるごとにどんどん正規雇用が難しくなっていく大量の非正規雇用の人々、技能実習生などはほぼ勘定に入っていない。

自分の周りでは、こんなに時間と労力を捧げて働いているのにこれだけしかもらえてないという人の方が多い。

 

中道右派さんの考えを否定したいわけではなく、それぞれに異なるリアリティがあるのだと思っている。

どこに自分の軸足を置くかによって見えるものが変わるのは当然で、コインの表裏のような側面もあると思う。

 

今のインターネット世界では、誰もが多かれ少なかれ、SNSの世界はエコーチェンバー的に閉じてしまいがちで、異なる価値観が交わる機会は少ないから、今回考えを聞かせてもらえて勉強になった。

現状に不満がある一般人に、それが与党のせいであるかのように吹聴したり、しねなどという暴言を含む個人攻撃さえする。もりかけ騒動も、あれだけ騒いでも、何も出て来なかったのに、未だに何かあったそれが何かわからないけれど、と印象操作をやめないから、何があったかわからないけど、何か悪いことをしていたに違いない、と思う人が一定数出ていて、存在しない嫌疑から憎悪を生み出そうとする策謀ではないでしょうか。

文章を読ませていただく中で、前提となるニュースソース、メディアの違いに興味が湧いた。

私の見ている世界では、右傾的な人々、とりわけ「ネトウヨ」と言われる人々が自分と異なる意見を持つ人を「しねなどという暴言を含む個人攻撃」をしているのをたびたび見る。

それぞれに死ねと言い合っており、傷つけ合っているのだなあと思う。このギャップは埋まらないんだろうか。

 

それから、「もりかけ騒動も、あれだけ騒いでも何も出てこなかった」というのは、私と認識が全然違ってびっくりした。

素朴にこれだけはどういうロジックでそうなるのかを尋ねたい気持ち。

赤木俊夫さんが自分の言葉で何があったかを告発した自筆の文書が週刊文春で大々的に報道されたり、妻の雅子さんが裁判を起こしたり、籠池理事長や近畿財務局の元同僚など、様々な人々の告発があったはずだが、それがどうして「何も出てこなかった」ことになるんだろう?

赤木さんの裁判で政府は「認諾」という形で一億円を支払ってまで真実を明らかにすることを避けた。それは実質的に罪を認めたのと同じことだ。

加計学園の理事長も一度も釈明せずにずっと身を隠したまま。追及から逃げ続けているだけで、正義が証明されたということには、到底ならない。

安倍元首相は、何があっても説明せず、辞任もせず、不起訴になっただけで、それをもって無実ということにはならない。

彼は自分のやったことの責任を取らなかっただけだ。

権力で自らの不正をねじ伏せて、一方的になかったことにしただけだ。

そして時間が経てばだんだんとうやむやになり、人々が忘れていくことを期待している。

彼が壊した良識やルール違反がもたらした負の遺産はあまりにも大きい。

「お墨付きを得た」として安倍さん同様に振る舞う人が今の社会には続々と現れている。

 

これらのことを人々が批判したり非難することが「印象操作」だったり、「存在しない嫌疑から憎悪を生み出そうとする策謀」だとは、私は思わない。

むしろ「存在しない嫌疑」と自明のように書くことが印象操作だと私には感じられてしまう。

中道右派さんは、赤木俊夫さんはどうして自殺しなくてはならなかったと思われますか?

 

 

自分の偏りは自覚している。

真実はミラーボールだから、人によって異なるのが当然だし、どの考えにも一理ある。自分一人でさえ常に揺れ動く。

究極的には皆それぞれの納得性に従っていくしかないのだろうと思っている。

自分の考えはこれからも臆せず書くけれど、(そうじゃなければこんな1円にもならないことやってる意味ないし〜!)ますます誰かを無理に変えようとするような書き方はせぬよう、気をつけなくてはと思っている。

 

長過ぎで恐縮だが、あと一つだけ書き残したことがあるので、続く