続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「犬王」「オールド」「俺の家の話」

「犬王」

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2021年/監督:湯浅政明/97分/2022年5月28日〜公開

松本大洋の作画、サイエンスSARUと湯浅監督、そして欠落のある者こそが芸能を担うというテーマに惹かれて見たけれど。

冒頭をはじめ、ハッとするような新鮮なアニメーションの表現もあったのだけど。

 

本作が何よりも重点を置いているらしいミュージカルのシーンの単調さと安っぽさはどうしたことだろう。心が折れそうになるほど長く感じた。

脚本も良いと思えなかった。物語の肝である「どうして奇形だった犬王がだんだんと人間の姿に戻っていくのか」が伝わりづらいので、全体として全く乗れなかった。

 

やはり映画は調和が大事で、ミュージカル映画であっても、物語の強度や構成がおざなりだとやはり物足りないものになってしまう。「イン・ザ・ハイツ」みたいに。

ビッグネームのコラボが映画の面白さを担保することはないのだよなあ。むしろトータルコントロールが効いていないことによる弊害を感じてしまった。

 

「オールド」

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2021年アメリカ/原題:Old/監督・脚本:M・ナイト・シャマラン/108分

ナイト・シャマランの新作が早くもアマゾンプライムで配信になり、ほくほくで視聴。

いかにもシャマランらしいアイデアで、そつなくまとまっていてアラがなく、楽しんで独特の奇妙な味わいを堪能した。

ナイト・シャマランは、スティーブン・キングと似た書き手なのかなと思う。スティーブン・キングは「自分はとても怖がりで、こんな悪夢があったら嫌だ、と思うあまり、思いつくだけの悪い想像を全部フィクションにして吐き出してしまうことで、非現実化するのだ」とインタビューで語っていたが、シャマランも「こんな地獄あったらやだ」が着想になってそう。

それにしても、これ結局ハッピーエンドと言えるのか。生き残ったら残ったで、つらいわ〜

 

「俺の家の話」

金曜ドラマ『俺の家の話』|TBSテレビ

2021年TBSドラマ/脚本:宮藤官九郎/全10話各話54分

 

アマゾンプライムで視聴。大好きな「マンハッタン・ラブストーリー」と同じくらい愛着を感じながら楽しく見た。

本作では親の見送り、老人介護が大きなテーマとして組み入れられているのだけど、クドカンらしく変にそらさず、でもポップに描いていて、その塩梅はさすがだなあと思う。

いつも時代の空気を感じさせる「今」の人々の物語をクドカンは描くけれど、彼のお茶目なフィルターを通すと、誰もが可愛らしくちょっと間抜けに見える。それでいて誰もが自分の誇りとか譲れないものを持つ一人の尊厳ある人として描かれている。

彼のドラマでは、誰のありようも責めないで人間を肯定して見られる。それは素敵な心持ちだ。

寿一の本質を「空」とした、それが彼の何よりの美点であり問題点であったというくだりにしびれたなあ。「好きなものと仕事に夢中で必死で残りが2GBしかない」とかも、なにか寿一はクドカン自身を投影した人のようにも思えて。

 

そして個人的にインパクトだったのは、これまで長年の苦手分野だったプロレスが好ましく思えたこと。

いろんな人がそこまで熱く語るからにはプロレスには何かがあるんだろうと思い、あえてこれまでいろんなプロレス小説や、映画や、漫画にも触れてきたが、どうにもプロレスの魅力が長年分からなかった。

ところが今回クドカンフィルターを通したプロレス、そしてマッチョな長瀬智也演じるブリザード寿はとってもチャーミングで、プロレスっていい世界だなあと素直に思えてしまった。筋肉モリモリワールドが基本苦手な私が、全然嫌じゃなかったって我ながら驚いた。どうしてだろうな。クドカンすごいな。

 

次作は来年Netflixオリジナルドラマで、離婚をテーマにしたホームコメディらしい。楽しみ。

是枝監督も宮藤官九郎Netflixかー。日本資本で作るよりも、自由度高く質の高いものが作れ、ギャランティもだいぶ違うとなれば当然そうなるだろう。

最近、映画館で邦画の予告編を見ていると、画やCGのビジュアルの安っぽさに引いてしまう。映画に限らず日本全体がじり貧だからしょうがないのだけど。