続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

チョムスキーへのインタビュー④わたしたちの姿

プーチンアメリカにヨーロッパを差し出した】

・今回のウクライナへの侵略は、犯罪であるだけでなくプーチンの視点から見て実に愚かなことだった。プーチンがやったことは、ヨーロッパを金の皿に乗せてアメリカに差し出したようなものだ。アメリカにとっては願ってもないことだ。

・冷戦以降、ヨーロッパが独立した第3の勢力になるかどうかが国際情勢における最大の問題の一つだった。

 選択肢の一つとして、ド・ゴールゴルバチョフのまとめた線に沿った、同盟関係のないヨーロッパとロシアによる協力的で豊かで平和な世界を創るシナリオもあった。

 もう一つの選択肢は「アメリカが命じ、ヨーロッパが従う」というNATOによる大西洋主義プログラムである。

 

プーチンは、ヨーロッパがアメリカに従属する形を作り上げることに貢献することになった。NATOは、ロシアから自国を守るために常に武装しなければならなくなった。

 

【そして気候危機を解決する道は閉ざされ、我々は滅びの道に入った】

・誰かがこの有様を宇宙から眺めていたら、人間の滑稽さに笑い転げていることだろう。しかし軍需産業エクソンモービルにとっては実に素晴らしい出来事だ。

 これまで、望みは薄くとも、世界の気候危機に対して、まだささやかな希望があった。現在の最も妥当な予測に基づくと、今世紀末には気温は産業革命以前と比べて3℃上昇する。これは破滅的な数字だ。全員が死ぬわけではないが、壊滅的な事態になるだろう。

 それを止めようとする動きもこの戦争によって消えた。

 エネルギー企業は忌々しい環境保護主義者を追い払えた上に、一転、文明を救ったと称えられるようにさえなった。そして、今、賞賛を受けながら化石燃料の生産を急拡大させようとしている。彼らは全てを破壊することになっても、残された期間に大儲けすることを選ぶ。

 いいですか、これがわたしたちの姿なのです。

 

Q:確かにこの戦争によってアメリカとNATOの観点から非常に重要なことが起こっている。ドイツはGDPにおける国防費の予算比率の上限を撤廃。ヨーロッパ各国は軍事システムの増強に関わることを非常にためらっているが、一方でNATOの基地を増やす議論も行われている。

 今回のプーチンによる侵攻は、ヨーロッパの武装主義をアメリカが完全支配する条件を決定づけることになった。

 軍需産業化石燃料の莫大な浪費にもなった。

 今アメリカのメディアはネオ・マッカーシズム(極端な反共産主義)一色に染まり始め、主流メディアの報道や、国家に疑問を呈する者は公然と「売国奴」として扱われるようになっている。とても危険なことだ。

 権力者に疑問を呈するのがジャーナリスト本来の仕事であり、民主主義社会における責任ある大人の仕事のはずだ。

 しかしそうした行為は「反逆行為」として攻撃される対象になってしまっている。

 

【勇気ある本来の仕事をしたジャーナリストがどうなったか】

ウィキリークスジュリアン・アサンジの例がある。政府が封印したい情報を国民に開示する仕事をしたジャーナリストがどうなったか。

 彼は何年もの間イギリス警察の拷問を受け、現在は収監中であり、今後アメリカに引き渡される可能性がある。勇気をもって本来の仕事を行った名誉あるジャーナリストは、犯罪者に仕立てられ、厳しく罰せられている。

・他のメディアはどうしているのか?彼らはウィキリークスの報道を嬉々として流用して報じ、大儲けし、人々の支持と名声を得た。そして利用するだけして、アサンジが逮捕された後は擁護も支援もせず知らんぷりだ。

 

【これほどの矛盾に満ちた国の悪質性を有効に批判できない二つの詭弁的概念】

・1981年カーク・パトリック国連大使が「道徳的同等性」という詭弁的概念を考案した。「あなたが大胆にもアメリカを批判するのなら、あなたは道徳的同等性という罪を犯している」つまり、道徳的に世界で最も優れたアメリカを批判する人間には、ヒトラースターリン程度の道徳心しか持ち合わせていない。だから、誰にもアメリカを批判する権利はない、というロジックである。

whataboutism(ワットアバウティズム)もある。ワットアバウティズムとは、批判に直面した者が、それには返答をせず、相手の全く別の観点の落ち度や、他の話題に話をずらして言い返す悪質な論法。

 100%完璧にクリーンな者は誰もいないのだから、この詭弁を用いればどんな正論も無効にしてしまうことができる。

「完璧に無謬でない者には批判をする資格はない」というロジックでやり込められ、黙らされた者は、「順応性」(それに諦め、慣れてしまうこと)に流れる。

 

【この流れを断ち切るためには、自ら立ち上がるしかない】

・何も新しいことはない。そういう動きの結果、歴史上いつも似た結果がもたらされてきた。

 この流れを断ち切り、克服するには、自らが立ち上がるしかない。

 

・私たちは、今世界で起こっていることに進んで声をあげ、対処しなくてはならない。

 そこには当然、アメリカがウクライナに対して行っている所業への批判も含まれる。

 アメリカは今、アメリカの「やっていること」と「あえてやろうとしないこと」の両方によって、ウクライナ人を全滅するまで戦わせようとしている。

 あなたが少しでもウクライナのことを思うなら、ここで語られた事実を批判することは正当なことだ。

 ウクライナのことを何とも思っていなければ、ただ黙っているのが良いだろう。(了)

 

ノーム・チョムスキー氏のインタビュー動画(約1時間2分)

https://youtu.be/yw5DvUgJlZA