続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

チョムスキーへのインタビュー①アメリカは何をし、何をしていないのか

今日はこれから不登校の親の会。うっかり忘れていて、娘氏と映画を見に行く約束をしてしまい、昨夜平謝りだった。

見たいと思っているのは、大好きなマイク・ミルズの新作、「カモン カモン」。モノクロなのも楽しみ。作品ごとの合う合わないは当然あるが、色がないとその分情報量がぐっと減るので、物語に没頭できる感覚がある。詩的な没頭感に身を委ねたい気分。

 

テレビをつければ戦争のことをやっていてつらい気持ちになるし、ニュースが他のしょうもないニュースを流していれば、それはそれで腹立たしくも思うし、自分を世の中から閉ざしていないとなかなか身が持たないと感じるこの頃である。

ドローンが上空から撮影した、全てが念入りに破壊されて、今や灰色の大量の瓦礫と廃墟だけになったマウリポリの町の映像の後に、大統領執務室みたいなところで軍隊のトップからマウリポリの征服の報告を受けて、さも上品そうに「おめでとう。マウリポリはロシア軍によって解放された」と答えるプーチンの澄ました顔を見ていると、カッと頭に血がのぼった。

こんなむごたらしい町の一体どこがめでたいのか。あまりにグロテスクだ。そして、そんなプーチンを誰も止めることのできないままにもう2ヶ月が経った。

 

戦争に限らず、あらゆる情報がめちゃくちゃに錯綜している。世界中でますます分断が広がっているように感じられて、純粋に頭痛がする。

そんな中で見たこの動画。アメリカのジャーナリスト、ジェレミー・スケイヒルによるノーム・チョムスキーへのインタビュー。

世界最高峰の叡智の一人であるチョムスキーが正面から今回のウクライナ侵攻について分析している。

あまりの政治の忌まわしさに見続けるのがしんどいのだが、淡々と、時に強烈な皮肉を込めて世界を読み解く彼の視点には、他にはない全体像を見たわす感覚がある。

この狂った世界に対峙するために、私たちは少しでもましな地図を手にする必要がある。

チョムスキーの視座を一旦しっかり取り込んで自分なりに理解して、雑多な情報からは身を閉ざすことにしようと思う。

 

〈インタビューの要約〉

Q:プーチンおよび現在起こっている大量殺戮に対する世界の公正な態度とは?現状の西側諸国によるウクライナへの武器供与、ロシア国民全体への徹底した経済制裁に正当性はあるか?

アメリカはこれまでも世界の秩序を無視して紛争を裏でエスカレートさせてきた】

ウクライナの自衛努力への支援は正当だが、支援の規模を慎重に調整しないと戦闘をかえって激化させる。

アメリカはイラクアフガニスタンなど多くの国に侵略した際に、「度を越した支援」をしてきた。それは批判されるべきことである。

 もっとも、アメリカは常に批判を無視して紛争を激化させてきた。ニカラグアのケース(ニカラグア事件 - Wikipedia)でも、アメリカは世界裁判所に提訴され、不当な武力行使の停止や賠償金の支払いを命じられたが無視。

 アメリカに自発的抑制は期待できないが「支援の程度を熟考すること」こそが世界が取るべき公正な態度。

 

ウクライナの完全破壊か、交渉解決しか戦争を終わらせるすべはない】

・戦争終結には2つのケースしか考えられない。一つはウクライナが完全に破壊される。もう一つは交渉による解決。

 ウクライナにとって最善の道は、交渉による和解で、それを最大の焦点とすべき。

 

アメリカがウクライナを西側に引き入れ、ロシアとの交渉は拒否すると公言したことがロシアを追い込む形になった】

・2021年9月1日の公式声明、11月の合意憲章によって決定された「いかなる形の交渉も拒否する」というアメリカの行動方針が今回の侵攻の根本にある。

 そこには「基本的に(ロシアとは)交渉をしない」ことと、ウクライナNATO加盟移行への要求が書かれている。これはウクライナが完全に西側の国となり、ロシアにとってはウクライナに対する交渉の余地を失うことを意味する。

 断言はしないが、このアメリカの発言が今回の戦争の引き金になった可能性があると思う。

 バイデンがこの方針を貫く限り、アメリカは間接的に「ウクライナ人は最後の一人になるまで戦え」と言っているのと同じことだ。

 支援の程度や効果的な制裁もたしかに重要だが、「交渉による解決」の必要性に比べれば、取るに足らないことだ。

 

Q:欧米メディアはゼレンスキーの発言を意図的に編集して「最後まで戦い抜くヒーロー」にに仕立て上げようとしているように見える。しかし、ウクライナの交渉担当者やゼレンスキー自身の発言を注意深く読み解くと、彼ら自身は交渉による戦争の終結を強く意識しているのが分かる。

 それにも関わらず、欧米メディアはウクライナが表明している譲歩の条件には耳を傾けず、ある種のストーリーを作り出そうとしているように見える。

 欧米メディアはなぜゼレンスキーを祭り上げようとするのか?

 

【ゼレンスキーの交渉による終結を望む発言を欧米メディアはあえて無視し、好戦的なヒーローに仕立て上げている】

・欧米メディアはゼレンスキーの妥当で真剣な提案や、何よりも重要な「ウクライナの中立化を受け入れる」という発言をあえて取り上げず、黙殺した。ゼレンスキーをチャーチルになぞらえ、彼のもつ本質を見えなくした。

アメリカに交渉によって戦争を終結させる考えがあれば今回の侵略戦争自体が起こらなかったかもしれない。

 

ウクライナとロシア双方の間には解決の道筋はあった。アメリカがそれを拒否した】

・そもそも、政治的解決の方向性はロシアとウクライナ双方においては侵攻以前から明確化しつつあった。

ロシアのラブロフ外相は、侵攻開始時に侵攻の2つの主目的を語っている。それはウクライナの「中立化」と「非武装化」である。非武装化とは、すべての武器を放棄するのではなく、ロシアを標的とした「重火器」武装の解除を意味する。いわばウクライナアメリカにとってのメキシコ(軍事的に確実に脅威でない国)になるということである。

・もし仮に、メキシコがロシアや中国と結託するようなことがあったら、アメリカはけして許さない。もしそんなことになったらアメリカが何をするかを皆分かっているから、誰もそんな考えははなから持たない。

・ロシアはウクライナをメキシコ化したかった。それは実現可能なオプションだったのに、アメリカは自身に対しては絶対許さないことを、ロシアに対してはやろうとした。

 

【クリミア、ドンバスについてウクライナとロシアには合意の道筋があったのに、アメリカがそれを公然と拒否している。そしてアメリカのメディアは、アメリカの主張を国民に隠している】

・現在、クリミアの人々はロシアの統治を満足して受け入れているが、アメリカはけしてクリミアを諦めないし、譲歩もしないと言っている。それは永遠に続く紛争の火種だ。

・ゼレンスキーは賢明にも「クリミアのことは今回は先送りにしよう」と言っている。

・また、ドンバスは8年間、ウクライナロシア双方によって極端な暴力が行われてきた。これまで推定1万5千人が殺された。

侵攻前に「ミンスク2合意(ドンバスにおける紛争の停戦合意)」の実施は可能だった。

しかしアメリカは超好戦的な立場を公然と主張した。

そのことを報じるメディアはなぜか一つもない。

アメリカには主たる目標をウクライナの中立化、非武装化において、メキシコ式の秩序を選ぶという道もあった。しかしアメリカは公然とそれを拒否した。

私たちに戦争を止めるためにできる唯一の方法は、超好戦的な態度のアメリカに変容を迫ることだ。

どんな問題であれ、最も重要なのは「他の誰かにそれができるか?」ではなく「それに対して我々が何をできるか?」なのであり、少なくともアメリカの政策については我々アメリカ国民はより多くのことができるということだ。

 

Q:先日、テレビショーで政府高官らがロシアに対する戦争計画に近いものを語り、ウクライナの戦争はロシアを徹底して弱体化させる目標の達成に有効だ、と発言していた。アメリカは、ウクライナ戦争を絶好の機会を捉えているように見える。

 

アメリカによる二つのあえてしていないことに取り組むことが戦争を終わらせる道である】

・「行動」には、もう一つの重要な側面があるのを忘れてはいけない。それは「不作為(行動しないこと)」だ。

 アメリカは何をしていないのか?

 超好戦的で間接的に戦争を仕向けるような方針をいまだに国が取り消していないのは、アメリカのメディアが重要な情報をあえて伝えていないために一般のアメリカ国民が気づいていないからかもしれない。

 ロシアの情報機関は、ホワイトハウスの公式声明を読んで把握しているから、アメリカが考えを変える気などないということをよくわかっている。

・もうひとつはアメリカが交渉に参加しようとしないということ。現在、外交解決を前進させる力がある国は、中国とアメリカの二国だ。中国はこの役割を拒否して当然非難されている。しかし同じように役割を果たさないアメリカは非難されない。アメリカを非難することは「許されないこと」だから。

アメリカがプーチンとその周辺をどう動かそうとしているのか、発言の意味やその意図を想像してみてください。「ロシアにできることなど何もない、さあ好きなだけウクライナを破壊すればいい。その結果、ロシアは世界から退場することになる。確実に、未来がないようにしてやる。ロシアは、崩壊して破綻するがいい」先日のテレビショーでの発言は、ようするにそういう意味だ。

 同様に、ゼレンスキーをチャーチルに例えた発言を翻訳すると「ウクライナを滅ぼせ!」という意味になる。

だから、戦争を終わらせるには、アメリカがこの二つの不作為ーー超好戦的な方針の転換と、交渉への参加に取り組むことが必要になる。

 つまり、ロシアを崖っぷちに追い詰めるメッセージを出すことをやめ、外交解決のためにアメリカ自身が直接関わること。これは実行可能なことです。