続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「私の帰る場所」

Lead Me Home (Short 2021) - IMDb

2021年アメリカ/原題:Lead me home/監督:ペドロ・コス、ジョン・シェンク/40分/2021年11月30日〜Netflix配信

 

夫のサンフランシスコ時代の知人から「もう普通の人はサンフランシスコには住めない、地価が狂ったみたいに高騰し続けてる」と聞いてびっくりしていたのは何年前のことだったろう?

彼がいた90年代のサンフランシスコは、60年代のヒッピームーブメントの流れを色濃く汲んだ、あらゆるマイノリティが自分らしく暮らせる自由の街だった

それが2000年代に入ってシリコンバレーを中心に、Googleやアップルなどの巨大テック企業のヘッドオフィスが移ってきてから、住民間の貧富の差がかつてないほど拡大し、地価や物価が高騰することになった。

今、カリフォルニアのベイサイドでは普通のアパートの家賃は22〜28万円、子供の保育園費用は月20〜30万円もする。

そのため、毎日フルタイムで働いているにも関わらず、家に住めずに車やテントで寝泊まりする「ワーキングホームレス」が大量に生まれて、増え続けている。

ドラッグの問題や病気、障害などを抱えてホームレスになっている人なども含め、現在全米の路上生活者の数は統計上だけでも約57万人いるという。

 

本作は、ホームレスに関する緊急事態宣言が発令されているロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトルの3都市のホームレスを3年かけて追ったドキュメンタリー。

作品としてのクオリティーの高さが際立つ。40分という短さも絶妙だと思う。監督の二人はいずれもキャリア豊富な優秀なドキュメンタリー監督で、素晴らしい仕事をしている。シンプルだが効果的な演出が、現実を残酷なまでに痛切に伝える。

なによりも、このありえないほど非人間的な状況に放り込まれている一人ひとりのホームレスが、それぞれ多様でいたいけな人間味を持つ愛すべき存在であることを丁寧に伝えてくるので、見ていてとても動揺してしまう。

そう、作り手は見る者を揺さぶろうとしている。その試みは見事に成功している。

 

作品の最後に浮かび上がる文字にはこう書いてある。

LEARN  MORE  AND  TAKE  ACTION .

 

この作品の日本版も作られるべきだと思う。