続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「ムーブ・トゥ・ヘブン  〜私は遺品整理師です〜」

Move to Heaven : 私は遺品整理士です キャストのインスタは?|おひとりコリアン

2021年韓国/原題:Move to heaven 무브투헤븐:나는유품정리사입니다/監督:キム・ソンホ/1シーズン10話各44〜62分/2021年5月14日〜Netflix配信

 

主人公は亡くなった人の部屋を清掃し、遺品の整理をする仕事を生業としている。ハン・グルはまだ20歳の青年だが、彼にこの仕事を一から心を込めて仕込んだ父親が急死したため、若くして会社を引き継ぐことになる。

一話につき一人の死があり、グルたちが「天国への引越しを手伝う」中で、故人にまつわる人生のドラマが展開される。

グルは軽度の自閉症であり、高い知能と一度見たものは全て覚えこんでしまうほどのずば抜けた記憶力と、見たものを視認し識別し推察する能力を持っている。そして、無垢で美しい心を持っている。

彼の個性でもってクライアントの死に向き合ったとき、故人の人生の真実がみるみる紐解かれていく。彼らが何を大事に思っていたのか、誰を一番愛したのか、心残りは何だったのか。

 

また、障害者であるグルの後見人になる刑務所から出所したばかりの叔父のサングとの関わりや、彼やグルの生き方を決定づけるような生い立ちにまつわるストーリーラインも相乗効果的にこのドラマを面白いものにしている。

 

全体としては、コメディありミステリーありバイオレンスあり、惜しみない全部のっけで楽しく見られるエンタメドラマ。でありながら、この作品は韓国社会における実際の社会問題を上手にテーマに取り込んでいて、それがいい。

例えば1話は非正規雇用とブラック労働で亡くなった若者。2話は認知症で家族から見捨てられた独居老人の孤独死。偽装されたストーカー殺人や、性的マイノリティの差別の問題、貧富の差など、どれも日本でも思い当たるケースばかりで、他人事ではない。

今のグローバル資本主義の社会においては、社会のありようは国を越えてその問題点についても多くの共通点があるということなんだろう。

また、この作品を通じて2000年代に韓国から20万人を超える養子が海外に送られたものの、適切な養育が受けられず、10人に一人が無国籍になって放置されてしまっているという韓国が抱える深刻な社会問題の存在も初めて知ることになった。

 

いつの時代においても、究極的には誰もの死が多かれ少なかれ「この社会における死」なのだと言える。人の死は、往々にして個人的な事情の帰結として矮小化されがちだけれど、俯瞰でものごとの姿が明らかになった時、実は相当数、社会による間接的な殺人が含まれるのだということが実感される。

 

社会の片隅で失われた一つの無言の死。ミステリー仕立てで面白く見せながら、名もない人の失われた人生を見つめていくことで、結果的に自分たちの生きる社会について省みることになる。エンターテインメントの力が正しく使われている作品。