続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「完璧な家族になる方法」

The Guide to the Perfect Family (2021) - Filmaffinity

2021年カナダ/原題:Le Guide de la famille parfaite/監督:リカルド・トロジ/102分/2021年7月14日〜Netflix配信

 

フランスから帰ってきたばかりの息子は、初めての海外一人旅だっただけに、日本と全然違う点、文化や人の感じの違いなど、色々感じたことを驚きをもって報告してくれる。

 

10代の仲間たちは皆総じて大人っぽかった。14歳の子が同い年くらいの感覚だった。

皆あんまり服を変えない。いつも同じ服を着続けていたり、化粧っ気がなかったり、飾り気がない。

町中で知らない人でも目が合ったらちょっとニコッとする。

お店では店員さんといつも気持ちの良い挨拶が交わされる。

TGVの中で向かいに座っていた知らない女性から、「ちょっとトイレに行くから、赤ちゃんを見ておいて」と普通に頼まれる。

町じゅうに電動キックボードが走っている。

BIO食材がとっても豊富でオーガニックスーパーも至る所にあり、値段も手頃。

物乞いが街角のあちこちにいる。

皆ピクニックが大好きで、自然の中で適当に持ってきた食べ物を広げてごろごろおしゃべりして過ごす。

パリ市内は、バカンスで8割の店が閉まっている。メトロは深夜まで動いているが、お店はだいたい21時半には閉まってしまう。24時間営業のコンビニを見ることはなかった。

メトロなど公共のインフラが安いし、学生は年間パスなどでさらに安価に利用できる。

道を訊くと知らないのになぜか適当に指示を出され、結局迷う。

 

 

全てが新鮮なんだろうなと微笑ましく思う。今回はマスタークラスで一緒だった同世代の友人ができて、一緒にピクニックに行ったり、一日観光案内してもらったり、家に招いてもらったりしていた。滞在も、マスタークラス期間以外はほぼホテルでなくAIR BNBを利用して、個人宅に泊まっていたので、期間は短いが、色々肌で感じられた部分はそれなりに多かったろうと思う。

何より、百聞は一見にしかずで「日本で皆がやっているように学校へ行ったり働いたり忙しく暮らすということが、普通とは限らない。そうじゃなくても成立している人生がいっぱいある」という当たり前のことを身をもって実感できたことは、今後の進路を考える上で、彼の人生の可能性を広げる大事な気づきだったと思う。

「がつがつ焦るな、余白を恐れて詰め込むな」といくら親が言ったところで通じなかったことが、同世代の友達のゆったり何もしないことを楽しむ様子を見て、目からウロコがぼろぼろと落ちたっぽい。

 

日本では、多かれ少なかれ、駆り立てられるように次々にミッションを与えられ、その短期目標に向かって頑張るの繰り返しで、そうこうしているうちに卒業して、また新たな場所で次々課題を与えられて頑張って、というサイクルが当たり前だから、人生そういうもんだと思ってしまうのは、ある程度無理もない。この社会にいて、レールから外れることの恐怖心、その思い込みを外すのは容易ではない。

もちろん、フランスにはフランス社会のレールや規範があり、公平な社会でもなければ問題がない訳でも全然ないということは承知の上で、なんにせよ視野が広がるのは狭いよりはいいことで、それを知ることによって彼は幸福を感じたようなので、良かったなと思う。

 

苦境にあるおっちんも、しのごの言わずにオモテに出しちゃうのがいいのかも〜、と思うが、(自分のことを棚にあげて)やはり若い女子ゆえの心配はあるなー、もしそうするなら、やはり用心してそれなりに環境は整えてやらないとな、と思う。

 

 

翻ってこの映画。カナダのケベックが舞台にも関わらず、まるで日本の家族を見ているかのような錯覚に陥った。

つまりカナダにはカナダ社会のレールや規範や同調圧力がばっちりあって、インターネット社会の弊害は世界中どこも似たり寄ったりで、カナダは日本に比べてもうちょっと成熟した社会かと思いきや、良くも悪くもこの程度なんだなーと面白く見る。

 

細かいディテールに、いかにも現代の家族というニュアンスがよく出ている。登場人物たちは現代人の意地悪なひな型みたいで、みんな誰かに似ている。自分にもチクリと刺さる身の覚え感。コメディらしく誇張しているけれども、全然他人事じゃなくて、特に未熟で見栄っ張りの大人たちのしわ寄せが全部子供に行っている感じが痛かった。

 

ローズがおっちんにめちゃくちゃ似ていて、やるせなかった。

セラピストの言葉。

彼女の症状は、倦怠感、睡眠障害に、食欲不振と胃痛。肌荒れと不安感、低い自尊心です。自分を醜く太っていると思っている。典型的な鬱の症状です。

彼女は親を失望させたくないと思っている。

信じてるよ、やればできるという言葉は、プレッシャーです。それをやめましょう。

罰ではなく対話を大切にしてください。

ただ一緒にいる、家族の行事に付き合わせるのではなく「彼女のための」充実した時間を過ごしましょう。

夕ご飯を食べるときは、テレビも携帯もiPadもなしで。

命令ではなく、質問をしましょう。

彼女に少し、無理をさせすぎましたね。

 反省のかけらもなく、逆ギレ気味の父親は、結局娘を追い詰めていく。

 

自分はこうはならぬよう、肝に銘じないと。

でも、あんまり自信がない。最近は、取り付く島がなくて、どう話していいか分からず戸惑っている。