続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「おいしい家族」

ポスター画像

2019年/監督:ふくだももこ/95分

板尾演じるせいさんの、母さんの服の着こなしが見事だった。ニュートラルで、偏見というものを寄せ付けない気高さがあった。

和生やダリア、瀧やサムザナといった分かりやすく個性的なキャラクターたちを、もっといかにもと感じてしまうかなと思ったけれど、奇をてらっているのではない。この映画の中の誰もが優しく、人間を肯定して真摯に生きているさまが伝わってくるし、何より楽しそうだ。ラストの大円団、海辺の結婚式のシーンの優しさに、なんだか無性に泣けてしまった。

結婚て別によう、女とか男とか、恋とかセックスとかだけじゃなくて、なんつーか、愛さえあればオッケーだと思う。いろんなもん無くした俺たちに、愛だけくれたんだ。せいさんは。

父さんだったせいさんが母さんになって結婚する相手であるおっさん和生の言葉は、書いてしまうと月並みな普通の言葉だ。だけど、全くもってそうだ、そうじゃないなんてことがなんであろうかと心から思わされる、地に足がついた生身の説得力があった。

それは、映画がこの一点の高まりに向かって器用ぶらず、ぶれない言葉で積み上げてきたたまものだと思う。

 

この映画を見ていると、血のつながりとか年齢とか性別とかどこで生まれてどう育ったとか、そういうことがほんとにどーーでもいい瑣末なことに思えてくるのがなんとも素敵だ。

こうじゃないといけないなんてことが何もなく、あんまり詰めず分け隔てなく、仲良く楽しくあれればいい。簡単なようで、この世や自分を省みると、全然そうはなっていない。

でもそういう優しい世界の方がずっといいに決まっている。心はともするといつの間にかすぐに元の日常に戻ってしまうのだけど、この広々とした心構えに何度でも立ち戻りたい。