続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「世代の痛み」②1985年以降の雇用の歴史と格差社会

【雇用環境の変化の歴史】

(上野)新自由主義が女の世界に食い込んできたのは1985年「男女雇用機会均等法」の制定が始まり。それまでは、女はどれだけ頑張っても報われなかったからです。

しかし使用者は巧妙で、あっという間に(女性の仕事を)総合職と一般職と区分けし、翌1986年に低賃金で雇用できる「労働者派遣法」を制定した。

派遣は当初は「新しい働き方」ともてはやされ、危機感も薄かった。派遣で働くのは本人の自由意志とされた。しかしその後は規制緩和に次ぐ規制緩和で雇用崩壊が起き、今では最悪な働き方に変わった。

バブルがはじける91年までは景気が良かったから大卒女子の就職も好調だった。皆均等法の効果と勘違いした。

しかしバブル崩壊後の就職氷河期になって、法律によって雇用が守られる効果がないことが露呈し、ジェンダー差はどんどん拡大した。

 

(上野)1995年に日経連(当時の経団連)が「新時代の日本経営」を打ち出し、政財官一体で非正規つまり使い捨て労働力を増やして良いということになった。その対象は女性と若者。

共犯者は団塊男性で構成された「連合」を初めとした労働組合組織。自分たちの既得権を維持するために若者と女性を差し出した。

(雨宮)そんなことをしたら子供世代の雇用が不安定になり、自分たちの老後も危うくなるじゃないですか。

(上野)彼らは今は不景気だけど景気が回復したら子供世代も正規雇用されると見込んでいた。その楽観は完全に外れ、そのままの非正規雇用が固定化することになった。

結果、団塊ジュニア世代の「貧困中年」が団塊世代の老後の不良債権化し、親子貧困が社会問題になってきた。

(雨宮)状況は悪化している。世帯平均年収は10年前より減少し、非正規雇用率は高まっている。

私は20代から40代までの20年間、就職・結婚・出産・子育てをする時期にずっと非正規で貧困でそこから脱出できなかった。団塊ジュニアの少なくない人が、年収150万円くらいの状態で結婚しないまま出産適齢期を過ぎつつある。

(上野)日本の少子化対策は、団塊ジュニアを救済せず自己責任で片付けたため、最大で最後のチャンスを逃した。

 

(上野)怒涛のように非正規雇用が増え、成人の健康な男性も苦しむようになって初めて非正規が社会問題化しました。女性はずっと貧困と格差に直面していたのに、正直ムカついた。

派遣は3年ごとに任期が切られる結果、年齢がいくほど次の職が見つかりにくくなっています。

(雨宮)女性の派遣は35才定年説とリアルに言われていますから。

(雨宮)2006年頃、30才過ぎても派遣で転々としている男性が大勢いるということに世間がようやく気づいて社会問題化した。

(上野)女性はずっと貧困だった。しかし女はいずれ結婚するからと問題にされなかった。結局経済的圧力で結婚へと強制されていただけです。

(上野)しかし、その後も政治は結局男性も含めて団塊ジュニアを見捨てた。新卒一括採用、終身雇用、年功序列を変えなかった。経営者の利益を優先し、人件費を節約できる仕組みを法律を改悪しながらより強化した。

今では男性の3割近く、女性の6割が非正規雇用

 (雨宮)35才までは若者扱いだけど、それを過ぎたらただの中年の失業者。今まで何をやってきたんだ、という自己責任の圧力がより強くなる。団塊ジュニアの非正規の人はほとんどがそのまま捨て置かれてしまった。

 

【格差が固定化した社会】

(上野)努力すれば報われるはずの新自由主義のはずなのに、1980年代後半からあらゆる職業で世襲が増えた。実際は新自由主義は格差を固定化するから、スタートラインから格差がある。

(雨宮)生活保護世帯の子供の成人後の貧困率もとても高い。

(上野)貧しい家庭では「しょせん」「どうせ」そのあとに「女だから」と続く。

人間は誰でも成長したい、何かを達成したい。でもそういう言葉には達成欲求の冷却効果がある。

差別が一番辛いのは、他人から差別されることより自分自身をないがしろにすること。自己評価が低く、自尊感情が持てません。

(雨宮)団塊ジュニア以降の世代は、労働者としての権利意識もほとんどない人が多数です。どんなひどい目に遭っても雇ってもらえるだけありがたいと怒る前に感謝している。

(上野)しかも責任感はある。お前が抜けたらどうなると言われると責任を感じてしまう。

(雨宮)企業にとってもっとも都合の良い人間ですよね。

正社員ですら使い捨て労働力でしかない。そういう時代がずっと続いてきました。過労死寸前かホームレス前提の非正規か、という最悪の二択。どっちも選びたくありません。

 

(上野)長期的に見れば労働者のモラルはどんどん下がり、企業もじり貧になるが、目先の利益しか考えない。企業はリストラをしてつじつまを合わせ業績を上げたり、海外移転して生き延びる。日本社会はますます将来がなくなっていく。

(上野)一つ一つのプロセスは人間のやってきたことだから、結局人間の選択の結果なのよ。バブル崩壊後の20年を考えると暗澹たる気分になります。団塊ジュニアの老後がどうなるのか、ものすごく心配です。

(雨宮)貧困層は老後まで生きていられない気がします。病院にいけないし、ファストフードなどを多く食べ健康状態も悪い、その上自殺率も高い。

 

 

(上野)最近読んだシングルマザーの老後に関する論文では、「シングルマザーに老後展望はない」という結果になった。

なぜなら、年金フローもストックもない。それは、社会が寄ってたかって子育てする女に対して労働を禁止したからである、と。

女性が一旦結婚退職すると、離婚したからといって正社員として再就職するのはほぼ不可能。非正規労働者として倒れるまで働き続けるしかない。その受け皿になっているのが介護市場。

 

(雨宮)今、世代論を語るのがすごく難しくなっているのは、正社員と非正規では価値観から何からあまりに違いすぎるから。属している世界が違い、言葉すら通じない感じです。

カップルも同一経済階層が多く、勝ち組は夫婦2人で世帯収入1000万近かったりする。その人たちは教育に力を入れ、勝ち組を再生産していく。

そもそも、ライフスタイルも共通言語も違うから、違う階層の人間同士は出会いようがない。

(上野)昔はもっと学歴間格差が大きかった。大卒か高卒かでは人生コースに違いがあった。でも今は、首都圏では特にこれだけ私立学校が増えたら、小学校から階層格差が起きてしまう。