続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影」①

Social Dilemma | Robert Lustig Website

2020年アメリカ/原題:The social dilemma/監督:ジェフ・オルロフスキ/93分/2020年9月9日〜Netflix配信

 

この映画が示す数々の事実は非常に憂鬱だけれど、私たちが今もっとも避けては通れない問題を正面から取り上げている。

誰もがその導入によって劇的な変化が起こったことを認めながらも、その影響の甚大さを薄々怖く感じながらも、あえて深く考えないようにしている事柄。

つまり「我々はスマートフォン・インターネット・SNSにすっかりアディクト(中毒)しており、後戻りはもうできない。そして、それらの利便性と引き換えに我々は何を手放し何を失ったのか」ということ。

 

【監視資本社会について】

原題はThe social dilemmaだけれど、邦題はもっと端的で直接的に「監視資本主義」と銘打っている。

監視資本主義(サーベイランス・キャピタリズム)とは、ハーバード・ビジネススクール名誉教授のショシャナ・ズボフが著書『The Age of Surveillance Capitalism』の中で資本主義の新形態として提唱し、またその危険性に警鐘を鳴らした概念。

 

その骨子は、「GoogleFacebookをはじめとした巨大テック企業は、無料のデバイスやサービスを通じて、ユーザーから大量の個人情報を得ている。彼らはそこからユーザーの行動に関するデータを余分にしぼり取って、企業にとって都合の良い利益の出る方向へとユーザーの行動を予測したり誘導したりする。

テクノロジーとインフラを掌握するこれらの巨大企業は、この世界において最大の権力者となり、彼らは社会をいかようにも都合良くコントロールできる」というもの。

 

現在すでに、人々のあらゆる体験は、企業によってデータ化され、搾取と操作の対象になっている。

自分がどう行動し、何を欲し、何を信じるか。

プライバシーであり、自由意志であると自分が信じている言動は、スマートフォン・インターネット・SNSによって、実は相当バイアスがかけられている。今、すでに。

 

気軽で、ポップで、無料で、無害で。そうあなどって無防備に受け入れてしまった末にある今の監視資本主義社会の現実を見据え、その未来をクールで客観的な視点でシミュレーションし、まともな勝ち目のなさを認めてその上でいかに解毒するかを模索する。平たく言えば、それがこの映画の意図である。

 

監視資本主義の起源は、グーグルなどの企業によるターゲティング広告の発明。その後、新規ユーザーをより増やし、購買行動をより促し、より大勢を招待させよう。そのために「人間心理」をどう利用するか、という方向の研究が深められることになった。

 

より多くの広告を見てもらい、より効率よく金儲けができる為に、人間心理をいかに操作してドーパミンを出させるか、ということが「成長戦略」と名付けられ、小さな実験が絶え間なく積み上げられた。

無料でSNSを利用するユーザーたちは、ていのいい実験台と同じことだった。

 

顧客を「ユーザー」と呼ぶ業界は二つだけだ。違法薬物、そしてソフトウェア。

 

ある時Facebookは、人の潜在心理に働きかけ、人々に投票行動を促すことができるかの実験を行った。その結果、彼らは発見することになった。「人々の現実の感情と行動を、ユーザーに気づかれないようにして操ることができるのだ」ということを。

 

その先にケンブリッジ・アナリティカのようなスキャンダルがあることはいうまでもなく、今ではもはや企業のこういうやり口に私たちは慣れっこになってしまって麻痺してしまっているとさえ言える。