続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー」

ポスター画像

2014年アメリカ/原題:Iris/監督・撮影:アルバート・メイズルス/80分

 

ファッション・アイコンとしての彼女のことを知ってはいたけれど、想像していた彼女の人となりは良い意味ですごく違った。

 

自分はおしゃれじゃないくせに、ファッションを極めた人というのに妙に興味があり、そういう人々のドキュメンタリーや映画も好んで見る方である。

 

映像作品で見たのは、アナ・ウィンターやフランカ・ソッツァーニ、この作品にも度々出てくるフォトグラファーのビル・カニンガムトム・フォードイブ・サンローランカール・ラガーフェルドなどなど。

ファッション界の人々の美意識の高さと、高いレベルを自他共に求める偏狭なまでの厳しさはすごいものがある。

ねじまき鳥クロニクル」のナツメグは、「私は自分であれ他人であれ、人が間違った格好をしているのが許せないの」と言った。彼らはつまりそういう人々。

 

アイリス・アプフェルは、誰よりも奇抜なファッションで、迷いなくきっぱり堂々としていて、ビジネスでも成功した裕福なニューヨーカーで、94才になってもかくしゃくとしていて。

だからさぞこだわりの強い厳しい人だろうと思ったら、少女のように軽やかで、誰にも一つも押し付けないし、気負いなく自然体で、他人のセンスを批判するようなことも一切ないのだった。

ただでさえ老人とは頑固で自己完結しがちなものなのに、彼女はとてもまっとうで、付き合いやすい柔和さと柔軟さを持った人だった。

 

100才(!)のだんなさんと仲良くマイペースに暮らし、ただただ正直に自分の「好き」を全開にさせて、自分にとっての美を発掘し、最高の組み合わせを研究することに存分にかまけている。

全部欲しがるのは無理だから、自分らしい生き方をするために子供は持たないと決めた。彼女の賢明さのあらわれだと思う。

 

どんなスケールであれ、方向性であれ、正しく選択と集中をし、自分の悔いなさを一番に据える生き方は、自由で健やかで美しい。