続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから」

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2020年アメリカ/原題:The half of it/監督:アリス・ウー/104分/2020年5月1日〜Netflix公開

 

始まって1分で、あ、この映画絶対好きだって分かった。

でも、何をもってそう思うんだろうなあ。自分でもよく分からぬ。

ともあれ、屈託ありつつ清々しく、ウィットの利いた、とってもチャーミングな作品だった。こういうのがもっともっと見たい。

 

インパクトとショックバリュー重視で、規模の大きい作品が量産されがちな時世の中で、こいうさり気ない、しかし趣向を凝らした作品にはなかなかお目にかかれない。

劇場ベースではコスパが悪いんだろうということは分からなくもないが、じゃあそういうジャンルこそNetflixはもっと積極的に取り組んでもらいたいよなと思いつつも、あまり多くはない印象。

 

もっとも、まず作品がいいかどうかが一番だし。製作数が多い分、「えー!?」というような作品にもまあまあぶち当たってしまうのがNetflix

ちなみに、Netflixを主体に活動している監督の中では、デュプラス兄弟の作品はどれもこれも期待以上ですごいなと思っている。いつも新作が楽しみ。

 

本作の監督・脚本のアリス・ウーは、これからもフォローしていきたい監督のひとりになった。

ずっと昔にジョアン・チェンで長編を撮ったことがある人みたいだけれど、今回が実質本格長編デビューというかんじ。

 

折しも、映画産業に中国資本が大々的に投入されはじめ、アジア人がハリウッド映画に登場するようになり、一昨年の「クレイジー・リッチ!」の成功もあって、以前よりはずっとアジア人をキャストに据えた作品を作りやすい土壌ができつつある昨今。

 

彼女のように、アジア系でレズビアンという自分自身のアイデンティティーを自らの作品に積極的に投影させていきたいという意欲をもつ監督にとっては、今はとても良い風向きなんじゃないだろうか。

 

ダイアローグの心憎いやりとりや、無駄のない巧みな演出、音楽の趣味の良さ、どれも見ていてスムースで心地良かった。

監督のインテリジェンスと人間を温かく見ているまなざしが作品に滲み出ていて、とても優しい気持ちになった。

 

主人公のエリー・チュウが、ぶっきらぼうだけれど可愛くて。あどけない顔立ちなんだけど、低いハスキーボイスなのが味。エリーはまさに監督自身の少女時代から造形されたキャラクターだと思う。

 

エリーは、田舎町の高校では、たったひとりのアジア系で、皆のからかいの対象。けれどずば抜けて頭が良くて、同級生の代筆をしてはこずかいを稼ぐしたたかでクールな女子高生。彼女は周囲の同級生のバカっぷりや田舎の閉塞感など、いろんなことにうんざりしていて、開き直っているようでもやっぱり内心傷ついていて、人が怖くもあって。

 

そんなある日、エリーは能天気だが人の良いフットボール部の補欠選手の同級生ポール・マンスキーから、美少女アスターへのラブレターの代筆を頼み込まれる。

 

エリーは、ポールの代弁者としてアスターとのやりとりをする中で、前々から気になっていたアスターに更に心魅かれ、アスターは勘違いして能天気なポールに好意を持つようになり、ポールは賢く心優しいエリーがだんだん気になって・・・

 

そんな言ってみれば青春映画らしいドタバタやすれ違いをコミカルに見せている。けれど、メインの3人それぞれの人種や文化的な背景とキャラクターがしっかり説得力を持って描かれているので、ただくっついた離れたみたいなことに終始するのではなくって、未知の将来への不安や青春の孤独も含めた、それぞれの微妙な心の揺れ動きがとても興味深く、ぐっと引き込まれてしまう。

 

三人三様、ほんとに愛おしい素敵な高校生たちだった。

そして最後のラブシーン。あんなに胸がきゅーんとする甘酸っぱい女の子同士のキスシーンは初めてだったなあ。ほう〜(ため息)

お気に入りの青春映画がまたひとつ増えた。