続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「5億円のじんせい」

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2019年日本/文晟豪(ムン・ソンホ)監督/112分

 

GYAO!によるオリジナル映画製作プロジェクトの第一回グランプリ作品。「ぴあフィルムフェスティバル」的な作品を想像していただけに、あまりにレベルが高い作品で、心から驚いた!ていうか、ここ最近見た邦画の中でもダントツに面白い映画だった!

 

とにかく粗さや拙さを感じない。やりすぎないし、足りなくない。

キャラクターたちは端役に至るまでみな魅力的で、話に強引さや違和感を感じる事もなかった。

 

ほんとに良いバランスの、同時に今の時代を感じさせる爽やかな成長物語になっていて、各所にキラリと光るワードチョイスが散りばめられている。

観客の心理を利用した絶妙な罠も心憎くて、やられた!感も楽しめた。

演出もさることながら脚本の優秀さは間違いなく本作の成功に大きく寄与していると思う。

 

 

子供の頃難病を患い、人々の5億円もの募金によって手術が成功して命を救われた少年「みらいちゃん」は、17歳になった。

皆の感動を背負い、期待に応えようと必死にがんばってきたけれど、ごく普通の取り柄もない高校生であることが、5億円の値打ちなんてないように思えることが、苦しくて後ろめたくて、ある日彼は耐えかねて、死ぬ気で旅に出ることに。

 

興味をそそらずにいられないプロットだし、その前提に負けないお話に仕上がっていた。

 

心に残る映画は千差万別だから、一概には言えないけれど、クライマックスの高まりの一点に向かってどうお話が集約していくか、ということは、感動を大きく左右する要素のひとつだと思う。

最後の最後で、「っかー、そうくるか〜!」というパンチというか、がつんとした見応えのあるシーンがあると、やっぱりしびれる余韻が残る。

 

安易なお涙頂戴とか、暴力的なインパクトとかショックは、パンチのようでパンチにはならない。

それはお話全体のテーマを強く貫くものでなくてはならないし、それでいて気づきや種明かしのような、はっとするような驚きの要素を含むというか。

何のためにこの物語があったのか、という深い意図が感じられる「何か」を感じられた時、強く心が動かされる。

 

この作品は、そういう高まりをちゃんと納得性のある形で作り込んできて、すごいなと思わされた。

終始軽いコメディーのタッチで仰々しいところもない。だけど、見終わった後にじーーんと深い満足感が残った。

 

 

コロナでこもりがちな日々、誰もにおすすめしたい一本。こういう映画がもっと見たいー。

公開時に上映館もほとんどなかったし、さほど知られていない作品のようだけど、埋もれさすにはあまりに惜しい映画だと思います。