続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

どの人生モードも

一昨日は一日中畑で働いた。

このところずっと体調が悪く、まともに時間通り勤務出来るか心配なくらいだったのに、畑にいる間はあまりに気分が良いので自分でもびっくりしてしまった。

 

畑の作物たちがけなげに生きているさま。寒さに負けず濃い緑の葉を茂らせていたり、ちょっと目を離した隙に不格好なほどぐんと勢いよく茎が伸びて花を咲かせていたり、逆に息を潜めるみたいにじっと変わらぬ姿のまま春を待っていたり。

冬は食べ物が少ないので結構鳥が実をついばみに来ているのも可愛い。

何より畑では空が広々と開けており、野菜たちが無言でそれぞれなりに育っていく生命力が空気を浄化しているように思える。

 

畑に身を置いていると心がすとんと落ち着き、満たされた。

ところが、車に乗ったり、家に帰ったらまた普通に具合が悪くなるのである。

畑って、自然って小さくてもすごいんだなあと感心した。

 

昨日は病院をはしごデー。

午前中は久々に採血をされた。

赤よりはだいぶどす黒い自分の血が注射器に吸い込まれて行くのを見ていると、なぜかどっと疲れた。

夕方からは歯医者。欠けた歯の治療が、ようやく一区切りついた。

 

しかしまあ、健康関連のお金のかかることにおののくこのところである。

普段よっぽど必要に迫られなければ病院にも行かず薬も飲まないが、いざこれはどうしようもないね、となるとぽーんと10万円とか普通に飛んで行く。問答無用で、ノーチョイスで、ノーディスカウントである。加えて歯はノー保険でもある(泣)。

 

無防備に自分の身体を他者にさらけ出すのは、とても心細く気弱になるものだな。

ガッツとか、自分をコントロールする気力とか、アグレッシブさとかが軒並み一気に減退する。

病院から帰るときはいつも自分がちっぽけで取るに足らない弱い存在に思えて妙に心許ない。

でも、弱さと優しさは繋がっているから、ちょっといつもより柔らかく優しく世界が見えるところもある。小さなものや弱っている人や困っている人が視界に入ってくる。

f:id:beautifulcrown7:20200115131251j:plain

f:id:beautifulcrown7:20200115132013j:plain

 

もちろん病気は嫌だし、ならないに越したことはないんだけれど、誰しも老いて病んで死ぬ以上、概ねどこかのタイミングで病気の人生に入っていくことは避けられない。

日頃の養生は今日を楽しく生きるためにももちろん大切だが、コントロールできないことはいくらもある。

むしろ例外だらけで、身体のことはこうしたらこうなるなんて誰にも断言できないはずだ。

だから、あんまり前もって備えるとかって多分無意味なんだろう。

 

そうなったらそうなったで、その時点で病気の人生モードにスイッチを切り替えて、その世界をそれなりに楽しみ、意義を見出しながらやっていくということなんだろうと思う。

 

傲慢にも「ああなるのはできれば勘弁願いたいな」と誰かを見て思ってしまうことがとりわけ若い時にはしばしばあったと思うのだけど、今はあんまりそうは思わなくなった。

多くはないが、身近な人たちの生き死にをそれなりに経験してきたことや、デイサービスで働いてお年寄りと過ごした時間がじわじわと認識をいつの間にか変えさせていたと思う。

 

どの人生のモードにもそれぞれの良さと面白みがある。

資本主義の価値観ですぐれているものを追い求めることは、分かりやすいしお金儲けにも繋がるので、誰もがキラキラとポジティブに、また善として描きたがる。

しかしその反動として、資本主義の価値観で劣っているとされているものが全部ネガティブで悪とみなされてしまうのは、浅はかな考えで、資本主義の弊害。

 

何よりその思想は自分自身の首を絞めることに他ならない。

人間は誰しも必ず、成長が終わった段階から、劣化と死に向かう宿命からけして逃れられないのだから。

 

清潔に気持ちよくあるために日々メンテナンスするのは大事なことと思うし、自分が好きで、似合う装いができるのも大人の楽しみ。

しかしあまりにも科学や医療で人間の力でどうにかできるっていうのが度を超してしまう例を見ると、わりにしんどそうだし、タイミングは変われどいずれ100%負け戦だよなあとしんみり思ってしまう。

 

とはいえ、目鼻立ちや体型でもんのすごく悩んでいる成長途中のおっちんの悩みを聞くと、そりゃそうだ、自分もそうだったと思うし、今の自分の感覚が伝わるとも思わない。ただ微笑ましく聞いて、ちょっとアドバイスしたりしている。

地道なことはどうせやらねーなーと思いながら。

 

さて、今日も悩みながらも米を洗い、野菜のたっぷり入ったスープを作ろう。

f:id:beautifulcrown7:20200115131123j:plain

f:id:beautifulcrown7:20200115131203j:plain
f:id:beautifulcrown7:20200115131220j:plain

歯医者の帰り、遅ればせながら初詣へ 。どんど焼きも終わって、閑散としている。枯れ木にぷっくりとした蕾。