続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「私をくいとめて」

ポスター画像

2020年/監督:大九明子/133分

 

「勝手に震えてろ」に続いて再び綿矢りさ原作を大九監督が映画化ということで、予想通りの手堅さであった。サブカル寄りのこじらせ女子の機微を描くことにかけては鉄板の安定感というか。

「勝手に〜」のヨシカは想定範囲の斜め上行く振り切れっぷりがなんとも痛快だったが、本作の黒田みつ子はもっと共感寄りで、それもなんか身につまされるような、しくしくしみじみ切ない共感なのだった。

みつ子だけでなく、先輩のノゾミさんやキャリアウーマンの澤田さんのありようもすごく分かる。自然な好感が持てて、それぞれに愛おしい。この作品は、いろんな女の人の生きがたさを見つめ、それぞれを温かく肯定する、シスターフッドの映画だと思う。

 

本作のハイライトは、温泉旅館でのお笑いライブでの女芸人に対するセクハラをみつ子が目撃するシーン。これは原作にはない監督の創作シーンとのこと。大九監督自身がお笑い出身ということもあり、とても実感がこもっていて、伝わってくるものがあった。

私も若い頃、仕事の場でなし崩し的にこういう不躾な目に遭ったし、それは若い女性にとっては多分珍しくもないことだ。

しかし、表向き笑顔で受け流していても、明確に言語化されずとも、こういう経験は心の奥に苦さをもって長く刻まれているものだと思う。「それくらいのこと」とたかをくくって、そんな女たちの悲しみや怒りの存在自体に気付きもしない男は世の中にいっぱいいる。

心して聞け、みつ子の叫びを、と思う。

 

あまちゃんコンビを再び見られたのも嬉しかったな。

のんさんは事務所とのトラブルやらで随分いじめられて、自分の名前を名乗ることもできなくなって、一時期は表舞台から干されたみたいになってしまった。なんと陰湿なことをするんだろうかと憤慨して個人的に彼女のことはずっと気になっていた。

彼女は向かい風の時期も前だけを向いて、心ある人たちとしっかり繋がって自分らしい表現を着実に続けていた。

そんな彼女の明るい輝きがいじめパワーを駆逐して、更に充実した形での活躍の場が広がってきたこと、素晴らしいなと思う。

いろんな若い俳優が出てきては消えて行くけれど、彼女はもはや簡単に消費されない存在になっている。今後の活躍が楽しみ。

 

 

生後235日(7m/23d)

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最近の赤ん坊はのお気に入りはリモコン、スマホ、マウスなど。買ってやった歯固めのおもちゃはすぐに飽きてしまって、大人が使っているものにばかり執着する。手を伸ばして私たちから取り上げては、かじったりやみくもに押したり叩いたりする。

そしてひとしきり遊んだら、躊躇なく振り払うようにしてそれらを床に叩き落とす。

壊れたら困るので落とされないよう押さえたりするんだけど、どうしても落とさないと彼の中で完結しないらしく、押さえる手をどけようとする。

落としたものを特に熱心に見ているわけではないんだけど、実はしっかり確認しているんだと思う。落として、音とか質感とかを確かめている。実験をしてるんだと思う。

持っている取り上げると声を出して抗議するようにもなってきた。それにしても自己主張がはっきりしてきたこの頃である。

 

お腹が空いた時の怒りっぷりも激しいので、液体ミルクのお世話になることも多い。便利でありがたいんだけど、そのせいもあって、最近私のおっぱいはあんまり出なくなりつつある。特に右の出があんまり良くなくて、時間をあけても以前のように胸がぱーんと張らなくなってしまった。

思ったより早く授乳期が終わってしまいそうで、少しさびしい気持ち。

 

今朝は静かな雨。音もなくしとしとと辺りを濡らしている。

朝、階下に降りてきて、ウッドデッキ越しに「雨だよ。あ・め」と抱っこして外を見せてあげる。

ふとした時、赤ん坊にものの名前を教えてあげるたび、いつもふっと甘い気持ちになる。

はな つき むし はっぱ いぬ とり くも

身の回りに当たり前のようにあるものたちの名前を呼ぶと、それらの輪郭が際立ち、新鮮な美しさをもってぐっと迫ってくる。

自分の生きている世界は思うよりずっとたくさんの美しいものたちに囲まれているのだということを赤ん坊は思い出させてくれる。

いつも同じように堂々とそこにあるのに、心が落ち込んでいたり、急いでいたりすると、気付きもしない。

落ち着いていて、優しい気持ちでいないと見えない。

それらが見えるほどに感性を生き生きとした状態にできるだけ自分を保っていく、その日々の心のありようのことを、「幸せに生きていく」と言うのだろう。

何かラッキーなことがあったり、勝ったりするとかって、一時的な興奮をもたらすし、そりゃ嬉しいんだが、幸せとは実はあんまり関係がないと年を重ねるごとに思うようになっている。

 

赤ん坊の髪の毛は、随分ふさふさとしてきた。後頭部に顔をすりつけるとすごく柔らかくて気持ちが良くって、さらに香ばしいパンの匂いがする。星野源の歌の歌詞はほんとだな。